TOEICやTOEFLの得点を履歴書やプロフィールに掲載して、信用を高めたり、就職で有利にしようとしたりする人が増えています。実用英検(いわゆる、「英検」のこと)については大昔から載せる人は多くいましたが、昔は、英語関係者以外でTOEICやTOEFLについて知っている人は、ほぼ皆無だったので、そんなものの得点を載せるのは英語系の学科を卒業した人ぐらいでした。しかし、2000年前後ぐらいから、履歴書にTOEICの得点を載せるのが当たり前になってきました。

日本で最初にTOEICを実施した教師である私としては、複雑な気持ちです。私は日本で最初にTOEICを実施するぐらいの人間なので、さぞTOEIC推進派だろうと思われるかもしれませんが、そうではありません。

長年TOEICを実施してきた経験から、TOEICの得点はそれほど信頼できるものではないというのは、私だけの意見ではありません。ソフィア外語学院で教える全講師の一致した見解です。私が思うに、TOEICやTOEFLは、まあ、せいぜいカラオケの採点ゲーム程度の信頼性です。プロでも60点しか取れないけれども、音痴のど素人が満点を取ることがあるというあれですね。

しかし、TOEICやTOEFLの得点を信用してはいけないというのには、もう一つ別の理由があります。それは、代理受験とか替え玉受験の問題です。最近、この問題がにわかに脚光を浴びている様ですが、実は大昔からありました。

1980年代のことだったと記憶していますが、TOEFLで替え玉受験と推測される事例があることが、英語教育関係の学術雑誌に載っていました。それによると、TOEFLで高得点を取った受験者が米国の大学に入学してきたが、実際の英語力が低く、どう考えても、誰か別人が代わりにTOEFLを受けたに違いないということでした。

そんな昔から替え玉受験が横行していたのです。実際、すでに当時から、まともな米国の大学では、TOEFLをすでに受験した外国人入学者に、別途、類似の別のテストを受けさせて、その結果を基に受講資格などを決定していました。入学前によそで受けたTOEFLの得点は全く考慮されていないのです。信用度がゼロだからです。

ちなみに、受講資格というのは、テストの結果で、正規の授業をいくつ取っていいのかと言う話です。点が低ければ、ゼロと言うことになり、英語の勉強のための授業だけを取ることになります。

まあ、入学者の間での評判は非常に悪かったです。何しろ、ちゃんと事前にTOEFLを受けているのに、また同じようなものを受けさせられるわけですから。しかも、事前に受けたTOEFLで560点を取っていて、正規の授業をフルに受講できるはずだったのに、入学後受けたテストで、540点と判断されて、英語の練習をする授業を受けさせる羽目になる様な人もたくさんいました。こういう人たちの怒りはかなりのものでしたね。留学はお金がかかっていますし、何度もできませんから、当然です。

英語のネイティブ・スピーカーで、かつ、フィリピンの大学で歴史の授業を英語でやっていた知り合いがサバティカル(平たく言えば、研究のための長期休暇で、外国の大学などに行って、1年ほど勉強して、最新の知識を身につけると言う制度)でオハイオ大学に来ていましたが、この人は入学前のTOEFLが580点でした。ところが、入学後のテストで540点と判定されて、英語の練習をさせられていました(笑)。いや、笑い事ではありませんね。

ここまで信用されないのは、替え玉受験などが横行しているからです。大学当局はそれをちゃんと把握し、知っているのです。別にTOEICやTOEFLだけではありません。恐らく実用英検でもそう言うのがあるでしょう。何せ、大学受験でも替え玉受験は盛んに行われている様ですから。

実際、私が短大の教師をやっていたとき、あまりにも英語のできない学生がいるので、その学生の高校時代の英語の成績を調べたことがあります。そうしたら、3年間ずっと5段階評定で5だったのです。明らかに、調査書の成績が不正なので、学長に報告しましたが、「うん」とうなずいて終わりでした。そう言うのが横行しているのは周知の事実なので、「うん」で終わりなのです。

まあ、そういうことをする高校からはもう推薦で学生を採ったりしないかもしれません。推薦入試を廃止させていただいた高校から、「推薦入試は実施してもらえませんか?」とよく聞かれたものですが、いつもマニュアル通りに「推薦入試は廃止になりました」と答えたものです。実は、全部の学校に対してではなく、その学校だけの話なのですが、まるで全部の学校を対象に推薦入試が廃止になったようなことを言うのがみそなのです。いずれにせよ、変な学生を推薦するとそう言うことになるのです。

大学入試ですら、こんなものですから、実用英検、TOEIC、TOEFLなんて信用するのは馬鹿以外にいません。そう言うのを履歴書に書きたい人は書けばいいのですが、採用する側は絶対に信用してはいけません。もし英語が重要であるのなら、別途、英語のテストを自前で実施し、その結果を有効なデータとして活用すべきです。

最近では、塾などの英語の講師でも、TOEICの点を掲載して、信用を得ようとしている人がいますが、これも同様に信用してはいけません。代理受験がビジネスとして成立し、そういう業者が存在するのですから、替え玉による代理受験で獲得した得点である可能性があるからです。

だいたい、替え玉の問題がなくても、英語の専門家でTOEICの得点を振りかざす様な輩は信用できません。プロ野球の選手が、学校の体育の成績を振りかざして、信用を得ようとしているぐらいに滑稽です。あるいは、プロの歌手がカラオケの採点ゲームの得点を振りかざして、CDを売ろうとしている様なものですね。まともな人間は恥ずかしくて、そのような真似はできません。TOEIC、TOEFL、実用英検などというのは、あくまでも素人が受けるテストであり、英語の専門家のためのテストではありません。実際、英語の専門家を対象にしたテストであるなどとはどこにも謳っていないはずです。

私が生徒から聞いた話では、早稲田大学と日本大学の両方に合格して、日本大学に入学し、そこを卒業した塾の先生がいて、TOEICで満点だか、高得点を取っているだとか・・・。日本大学の卒業証書を持っていれば、日本大学を卒業したのでしょうが、早稲田大学の入試に合格したなどというのは、証明書などないので、信用すべきではありません。

そもそも、早稲田大学と日本大学の両方に合格して、日本大学に入学する人などいません。

また、日本大学を出た人がTOEICで満点を取るなどと言うこともあり得ません。これほど不正が横行しているわけですから、「早稲田大学を蹴って日本大学に入った」と言っていることと併せて考え、疑うのがまともです。

TOEIC等の受験では、本人確認書類が必要で、写真で顔をチェックされるわけだから、ごまかしは無理だと思う人もいるかもしれません。本人確認書類は、依頼人が受験代行業者に渡せばすみますし、顔を厳密に調べるわけでもありません。

だいたい、実物大ならともかく、小さな写真で顔が似ているかどうかなんて、よほど時間をかけない限り、判定できません。それに、めがねと髪型を合わせるだけで、別人でもそっくりに見えます。マスクをしていたら、絶対にばれません。

ちなみに、安いところだと、だいたい10万円で代理受験を業者に依頼できるらしいです。成功した場合の利益を考えると、10万円でTOEICの得点が買えるのなら、安い買い物となります。頼む人がたくさんいても不思議はありません。実際、頼まれて、代理でTOEICを受けたという人も実在します。

TOEIC替え玉受験、やったことあったわ

2014-02-26 13:31:58

テーマ:英語の勉強

  私が社会に出た頃、ESという言葉がそもそもなかったんですが。

  エントリーシート、つまり学生さんが自分を売り込む書類のこと?

  就職用の身上書、みたいなもんかしら。

  自己PR書?

  で。

  ネットで一次試験、みたいなのも今は当たり前なの?

  ネットでの試験は替え玉でもOKなのか、という記事がネットに出ていて。

  思い出したんですが、私、これまでにTOEICの替え玉受験、やったことあったんだわ。

  やるべきではないんですが、諸般の事情により、やりました。

  今でもね、やるべきではなかったと思っていますよ、もちろん。

  その組織内で働く人すべてにTOEIC受験が義務づけられている場合、リスニングがなく筆記だけ、しかも自宅で受験可能、というのが一般的だった。

  今から20年くらい前はね。

  今はどうだか分からない。

  で、リスニングがなく自宅で受けられるので、TOEICでいい点が取れそうな人に替わりに受けてもらうことは可能であった。

  そんで。

  私が替え玉となって受けると、当然、「通訳もOK」というレベルの点になるので。勉強しないで適当に受けても850点は超える。

  替え玉受験を依頼した人が仕事で英語を使うハメになると、「お前、ホントにTOEICであんなにいい点、取ったのか?」と言われるハメになる。

  実際に私に替え玉を依頼した人も、後に上司に「本当にTOEIC○○点だったのか?」と疑いの目で見られたことがあった。上司の通訳をしたのだが、まったく役に立たなかったのである。で、「黒人であった相手の英語がなまっていて通じなかった」と言い訳したそうである。

  相手に失礼であろう。

  しかも。

  その黒人とは、あのパウエル国務長官だったのである。

  イカンよなあ、イカンぞ。

  いつかパウエル氏にお会いしたら、私もお詫びしようと思う。

  パウエル氏と仕事で会うかもしれないような人が、TOEIC替え玉受験をすべきではなかろうに。

  いや、替え玉になってしまった私も同罪か?

  組織によっては、TOEICの点がある程度以上ではないと出世できない、海外赴任できない、という場合もあり。

  私には替え玉受験を依頼する人の神経も分からず、いつか替え玉だったと分かると結局、ソンではないかと思うのですが。

  どうなんですかね。

  コネで就職。裏口入学。替え玉受験。

  どれも同じようなもの?

  分かりません。

諸般の事情で引き受けたそうです。

しかし、これは犯罪ではなく、罰する法律はありません。単に道徳上の問題でしかないのです。

ますます、敷居が低くなるでしょう。

TOEICの得点を振りかざす奴には要注意

・・・と言う話でした。