学校や塾でよく用いられている文法翻訳法(英語の文法を教えて、英語の文を読んで日本語に訳させる教授法)は、政府の政策により禁止されています。今更ですが、なぜこれが禁止されているのか説明したいと思います。

小学校から始まり、中学、高校で行われている英語教育の目的は、英語でコミュニケーションを行う能力を養成することですが、文法翻訳法が禁止されているのは、文法翻訳法では英語でコミュニケーションを行う能力が養成できないからです。

この背景には、最近の生理心理学による脳の研究で、人間の脳は訳しながら話すと言うことができないと言うことが明らかになっていることもあります。つまり、文法翻訳法をいくら工夫しても、英語でコミュニケーションをする能力を養成することは不可能であることが明らかなのです。

そのような科学的な根拠は別にして、実際に文法翻訳法と直接教授法でどういう違いが出るのか見てみましょう。なお、ここで言う直接教授法は、あくまでもソフィア外語学院で行っている直接教授法になりますので、ご注意下さい。

1.発音

文法翻訳法では、まともな発音を教えることはありません。教室内で日本語を話す先生と通じる程度の発音を教えるだけです。当然、その発音で英語を話しても、日本人以外には通じません。改めて言うまでもありません。

一方、直接教授法では、少なくとも英米人に通じるまで発音の練習を行います。ソフィア外語学院では、特に完璧なレベルまでに仕上げていますので、完全に通じる発音になります。

2.読解

文法翻訳法では、数年かけて勉強を続けると、教科書の英語のような単純でやさしい英語を辞書を引きながら長時間かけて解読するように読む能力を養うことができますが、それ以上は無理です。また、これができるようになるのは、目標とする文章の難易度により違いがありますが、知能の高い2%から5%の生徒に限定されます。

直接教授法では、辞書を引かなくても、複雑で難解な文章が読める読解力が身に付きます。これに必要な年数は、ソフィア外語学院の場合、文章の難易度と週当たりの学習時間と本人の能力により違いがありますが、2年から6年以上かかります。これができるようになるのは、目標とする文章の難易度により違いがありますが、95%から98%の生徒に及びます。また、文法翻訳法では読めるようにならない難易度の高い英語の文章も読めるようになります。

3.作文

文法翻訳法では、文法の練習の一環として、日本語を英語に訳す和文英訳が行われることがあります。しかし、この方法では、実際には、めちゃくちゃな英語になるため、永久に通じる英語が書けるようにはなりません。よって、英作文ができるようになる可能性はゼロに近いです。

一方、直接教授法では、自由英作文の形で練習が進行し、英語が徐々に正確になっていきます。早ければ2年後ぐらいから、ほぼ正確な英語が書けるようになります。その後も、勉強を重ねるにつれ、より正確でより複雑な英語が安定して書けるようになっていきます。直接教授法は、英語が書けるようになるための唯一の方法です。

4.聞き取り

聞き取り、つまり、リスニングの能力ですが、文法翻訳法ではリスニングを行わないため、聞き取りの能力は養われません。文法翻訳法と平行して、別途、リスニングの練習をしても、進歩が非常に遅く、ほとんどの人は、実際に使われる英語が聞き取れるようにはなりません。

直接教授法では、リスニングに重点を置いた授業が行われますので、最初から順調に英語が聞き取れるようになっていきます。学習を継続するほど、リスニングの能力は向上していきます。

5.会話能力

会話能力、つまり、スピーキングの能力ですが、文法翻訳法ではスピーキングを行わないため、英語を話せるようにはなりません。文法翻訳法と平行して、別途、英語を話す練習をしても、永久に「This is a pen.」などの簡単な決まった言い方が少し言えるだけに留まり、実際に英語が自由に話せるようになる日は永久に訪れません。

直接教授法では、教師と生徒が英語で話しながら授業が進行していきますので、順調に英語による会話の能力が身に付いていきます。学習が進むにつれ、より自由に英語が話せるようになっていきます。

6.文法

文法翻訳法では、英語学習用に考案された特殊な文法のルールを教えるだけで、文法の基礎力である英語の感覚が身に付きません。そのため、ルール外の文法的な事象を分析できませんので、永久に文法がわかるようになりません。

直接教授法では、文法のルールを教えながら、英語の感覚を身につけるための学習を進めますので、どのような文法的な事象も的確に判断できるようになります。文法の専門家になるためには、直接教授法で勉強しないとだめです。

7.単語力

文法翻訳法では、単語は暗記により学習します。習得可能な単語数は、暗記の能力で決まり、普通の人は1千語から2千語ぐらいが限界で、優秀な人で6千語ぐらいまでです。3万語を超える単語力を身につけた例は見あたらず、恐らく、一億人中に何人もいません。実際の例で見ると、平均的な人は、150語から500語ぐらいが多いと思われます。

直接教授法では、単語は暗記ではなく、自然習得により学習されます。習得される単語数は、ソフィア外語学院での学習の場合、6年間で2万語以上になります。さらに学習を続けた場合、5万語以上になります。そのため、普通の読書で困ることはなくなります。


効果において、上記のような明らかな違いがあるため、文法翻訳法は禁止となり、直接教授法で教えることが国の方針になっているわけです。しかし、問題は教員の採用と教授技術と実行率が問題となります。

8.教員の採用

文法翻訳法では、高い英語力は必要ではないため、TOEICで300点~400点でも十分教えることができます。これはCTEでは80点から100点(240点満点)に相当します。このレベルというのは、例えば、昭和高校の平均的な生徒がソフィア外語学院に入学した場合に、1年で達成できるレベルです。

一方、直接教授法では、もっとずっと高い英語力が必要になります。ソフィア外語学院でのデータでは、TOEICで790点以上ないと、まともに教えられないことがわかっています。大体、800点以上と見ればいいと思います。TOEIC800点以上の人は、ほとんどいないので、採用が難しいです。

中学と高校にそれぞれ推定3万人以上、合計6万人以上の教師がいるわけですが、TOEIC800点以上の人を6万人も採用するのは、どう考えても無理です。そもそもTOEIC高得点者が全員学校の先生をやりたいなどと思うわけがないので、せいぜい1000人から5000人採用できれば、いい方ではないかと思います。CTEでは160点~180点以上のレベルですが、ソフィア外語学院の生徒以外で、こんな点を取る人はほとんどいません。

つまり、文法翻訳法で教えられる先生を採用するのは簡単ですが、直接教授法で教えられる先生を採用するのは、至難の業(わざ)で、これが最大の問題になります。しかし、公教育の学校でも47%ぐらい直接教授法への転換がなされてきた様なので、内容はともかく、大した変化だと思います。

9.教授技術

文法翻訳法は大して教授技術のいらない方法です。文法翻訳法で教えることを難しいと言っている人がいたら、でたらめを言っているのか、単に、極端に英語力が低いのが原因でしょう。

一方、直接教授法の場合、相当にしっかりしたトレーニングを積まないと、まともに教えられる様になりません。また、相当にしっかりしたトレーニングが実施できる先生も必要になり、これも見つけるのが著しく困難です。不可能に近いぐらい困難だと思います。

仮に、適当な人材を見つけたとしても、6万人以上の教師をどうやってトレーニングして行くかという問題もあります。まず、そう言う先生が少なくとも1200人は必要です。それを全国に配置するというのが次の難問になります。さらに、英語の教師だけに研修を課すのも大変です。どういう日程でどう研修していくのでしょうか?

実際に、米国の大学で教員のトレーニングをやっているのを見ると、一人の先生が30人の学生を半年かけてトレーニングしていました。これだけの時間をかけるのは大変なことです。しかも、どれだけ成果が上がっているのか謎です。ちゃんとした成果を上げるとなると、定期的に何度も繰り返さないとだめです。

ソフィア外語学院では、長い年月をかけてマニュアル化されているので、失敗することもなく教えられますが、公教育の学校でもそういうものが必要でしょう。研修だけで、後は勝手にやらせると、ろくな教え方にはなりません。

ソフィア外語学院でも、20年以上前は教授技術だけを指導していましたが、そのころは、あくまでも印象にすぎませんが、先生により成果はまちまちという印象がありました。マニュアル化された現在では、どう考えても、誰が教えようと結果は同じです。新人の講師だと、マニュアル通りに教えるから、下手な教え方になるのではないかと思う人もいるかもしれませんが、マニュアル通りに教えているのは、マニュアルを作った本人である私ですので、どう考えても、私と同じ成果になります。

よほど細やかな指導をするか、天才的な教師でない限り、こういうマニュアル化は必要です。直接教授法の場合、それほどまでに教師の才能によるところが大きいということです。英語を英語で教えれば、誰でも成果が上げられるというわけではありません。

10.実行率

教師は生徒にとって一番ためになる教え方をするという倫理観を持っていると思っていませんか?そんな倫理観は教師には全くありません。どういう授業をやるかは教師の自由だというのが基本的な考え方で、その結果、教師にとって一番都合のよい教え方をするのが普通です。

文法翻訳法は楽なので、英語の教師の間で絶大な人気があるわけです。決して、生徒にとって最良の方法ではありません。文法翻訳法が生徒にとって最悪の方法であることは、英語の教師なら誰でも知っていることです。生徒の事など知ったことではないので、英語の教師は文法翻訳法を使うのです。別に文法翻訳法を使ったからと言って、給料が下がるわけでもありませんし、英語教育に熱心な親でもいない限り、文句を言われることもありません。教える側にとっては、何のデメリットもないのです。

一方、直接教授法は教師への負担が著しく大きいです。授業の準備も過労死しかねないぐらい時間がかかります。しかも、直接教授法を使ったからと言って、給料が上がるわけでもありません。

現状、文法翻訳法が禁止されていても、文法翻訳法を使ったからと言って、罰則が適用されるわけでもありません。入試で点が取れないなどの罰をくらうのは生徒であって、教えた教師に不都合なことは何もありません。監視する人もいません。

こういう状況下で、放置すれば、どうしても文法翻訳法をやめない先生が出てきます。これが現実です。罰則規定とか監視体制が必要なのです。しかし、主に政治的な理由によると思われますが、そう言うものは作られません。

政治的な理由というのは、歴史教育に関わる昔からの問題の話です。日本史の教科書にないことを子どもに教えられると困るから禁止しようとすると、左の傾向の強い人たちから、猛烈な反発をくらうのでできないというようなことです。教え方に罰則規定や監視体制を作るというのは、英語だけ特別というわけにはいかないのでしょう。

しかし、罰則規定や監視体制がない状態では、実行率は限られます。100%実行させるには、そう言うものが必須になるでしょう。


これだけでも大変な話ですが、もっと話をややこしくしているのは、親の問題、保護者の問題です。

11.親の理解

日本人は、大体にして、人の言うことや広告を鵜呑みにする傾向があります。納豆でやせると言われると、納豆でやせると思いこむのです。しっかりした知識を持って、自分で考える習慣がないのです。

だから、塾で文法翻訳法をやっていると、それが入試に合格するための方法だと思うのでしょう。そんな証拠はどこにもないのに、なぜこんなことを信じ込むのか不思議です。

ソフィア外語学院では、愛知高校の底辺レベルの生徒で、その上、脳に障害があっても、センター試験で90%取れています。どう考えても、直接教授法で英語の勉強をした方が有利です。こういうちゃんとしたデータを元に客観的に考えなければだめです。

しかし、そう言う人はほとんどいません。実は、今から35年も前の話ですが、大学の教職課程で教えられた通りに、中学校で直接教授法を実行しようとした先生がいましたが、父兄が猛反対したため、その先生は辞職してしまいました。

こういう不見識な親がいると、全く公害そのものですね。当時、これで実用英語を学び損ねた子どもたちは、以後、英語で苦労する羽目になったと思います。全部、親が悪いのです。とばっちりを受けた無関係な子どもは気の毒です。

だから、国が政策としてきちんと示し、文法翻訳法が入試で圧倒的に不利になるようにする必要があったわけです。もはや、文法翻訳法で英語を学んだ人は、入試でしっかり不利な戦いを強いられ、その後の人生でも、英語で苦労するしかありません。


文法翻訳法がなぜ禁止になったのかという理由、禁止になっても、文法翻訳法がまだ続いている理由、そして、その他の周辺の事情が、これでわかったかと思います。

賢い人は、直接教授法で英語を勉強しましょう。